大江 忍
この度、当会の大きな目標でありました伝統建築の技術が「ユネスコ無形文化遺産」に登録され、世界においても、日本の伝統建築技術が認められました。
これは、ひとえにご協力いただきました皆様のおかげです。心より感謝申しあげます。
思えば、2014年8月に、当会の前会長である故・中村昌生先生に、伝統建築技術が風前の灯であることに危機感を感じていることに賛同していただき、まずは、「和食」がユネスコ登録されたことについて、一緒にヒアリングを和食関係者にして、どのようなプロセスを踏めばよいのかということを学びました。
そのために準備団体をつくり、建築技術の登録運動を2015年3月より始めることになりました。
その後、多くの賛同者を得て、この運動は広がり、3万人を超える署名を文科大臣に提出することができました。また、奈良、京都、東京、名古屋などでの主催のフォーラムをはじめ、日本各地での関連イベントを開催し、多くの参加者の方にアピールすることができました。
時には、NHKのニュース番組の特集にも取り上げられ、認知度もあがりました。
しかし、当初から文化庁に提案しておりました日本建築に不可欠な「庭屋一如」の思想である、日本庭園や石垣の技術などは、含まれることなく登録されましたので、今後、追認されることを希望しております。
ユネスコ無形文化遺産登録は、あくまでも通過点の一つであり、このまま、絶滅危惧種のような保護された元でしか生き残れない技術にならないように、次世代へと受け継ぐための連携が必要と考えております。保存や修繕だけでは、技術は伝承されません。未来の文化財を建築するためにも多くの伝統建築技術を用いた建築物を新築することが大切です。
今回、ユネスコ登録されたことは、伝統建築を受け継ぐ全ての職人が頂いた勲章でありますから、誇りに思ってほしいです。そして、狭い一部の建築技術だけでなく、全ての分野において、継承が必要です。山の裾野が広ければ広いほど、頂は高くなります。
これを機会により多くの関心が高まり、技術を継承する職人が増えることを切望いたします。日本伝統建築を未来に繋ぐために。