概要

設立趣旨

日本人は古来から、自然を支配しようとか、自然に対抗しよう、という考えや姿勢をいささかも持たなかった。人間も自然の一部として認識していたから、暮らしも住まい方も、自然と一体化することを目ざしてきた。

そのような生き方から育まれる心や感性によって国民性は養われ、日本固有の文化が生まれたのである。それは、古く万葉の時代から連綿と受け継がれ、明治維新というあの激動の変革期でさえ、きちんと親から子へと伝えられてきた。

日本の大工は、生きている木の性質を知り尽くし、木の持つ力強さと美しさをどう引き出すかに腐心しながら、長い歳月の間、代々構築の技を磨いてきた。大工の技と芸は、季節の推移に伴う木質の変化まで見のがすことなく、木の命が住む人の心を和ませ、安らぎを与えることに活かそうと努めた。

風雪や地震に耐える堅固で逞しく美しい構造体を日本の大工は、何千年に至る長い歴史に培われた暮らしの叡智である「経験の科学」によってつくりあげてきた。これが「伝統工法」である。木と土と紙の家は呼吸する家であった。

こうした伝統工法によって初めて、和風の佇まいや、庭と触れ合う詩情漂う空間が生まれるのである。

伝統工法は、世界にもその例を見ない、日本独特のものである。数々の名作を創った建築家ライトは日本の大工の精緻な刻みに感嘆して、「世界中で一番木を知っているのは、おそらく日本人だろう」と語っている。

固有の文化を滅ぼす思想や制度が戦後に生じ、大きな変化をもたらした。それ迄貧しい中で支え合ってきた結(ゆい)にみられる共同体社会も、家族中心の制度も、個人主義的思潮の中で崩壊し、伝承文化も後継者を失った。社会を支配し始めた市場経済がそれに拍車をかけた。1960年に始まった高度成長政策は、日本建築学会の伝統否定の姿勢や建築士法と共に伝統の破壊を進めた。

だが、近年、我国における伝統木構法の耐震性が理論および実験の両面から確認されている。近代合理主義が世界的な行き詰まりを見せている21世紀に、我々日本人はもう一度、すぐれた日本の固有文化を掘りおこし、その知恵に学び次代へつなぐ努力を迫られている。そのための根幹は、私たちの祖先が築いてきた、伝統工法による木造建築を継承することにある。

伝統工法をもし断絶させたら、日本の伝統文化はやがて衰退するであろう。

この危機を広く国民に訴えるとともに、何よりも自然との共生を促し、楽しませてくれる住空間を甦らせ、大自然との関係を修復するため「伝統を未来につなげる会」を設立する。

前会長      故 中村 昌生

団体概要

名称一般社団法人 伝統を未来につなげる会
設立年月日平成23年6月20日
代表者後藤 治
所在地〒606-0805
京都市左京区下鴨森本町15 生研ビル内
TEL 075-711-2006
事業内容伝統木造建築技術を次世代に継承することを目的とする、調査研究・講演・広報・推進活動など

【平成30年4月1日現在】

主たる事務所

所在地〒606-0805 京都市左京区下鴨森本町15 生研ビル内
TEL050-3659-2725
※ 受付時間 10:00〜17:00(祝祭日を除く月曜日から金曜日)
FAX0561-74-0769