進士五十八
2020年は「ウッドファースト日本・元年」
カーボン・ゼロを日本政府が初めて宣言した2020年。国民みんなで木造建築の主流化を本気で考えたいものだ。
法隆寺が世界最古の木造建築だということは、日本中の子どもの常識だろう。ということは誰もが建築は木造が本来形だと認識していて不思議ではない、ということではないか。
ところが現実は、世界中の大都市、日本中の地方都市でも、鉄とコンクリート、アルミとガラスが現代建築の常識になっている。
今さら日本の近代化や震災復興と防火都市建設、近年の耐震高層高密都市再開発への潮流を指摘するまでもなく、何の批判もなく、こうした都市化を国家ぐるみで推めてきた問題点を関係者は今一度自覚するべきではないか。
そうした認識さえあれば、日本全土をコンクリート建築で蔽い尽くす発想を見直し、大都市や地方都市の都心などDIDはコンクリート建築ゾーンとする一方、それ以外の中低密田園地域の基調は「木造建築」とするウッドファースト思考が、これからの日本の世論の大勢となってもおかしくない。
こうした世論形成の起点となり核になるべき契機が、ユネスコ無形文化遺産「伝統建築工匠の技」(2020.12.15登録)であろう。ややもすると、文化財建築の保存技術の継承にのみ矮小化した議論へ視野狭窄になりかねない。その点には留意したいものだ。
中村昌生先生とのご縁で本会に出させていただいている私は造園家。先生年来のご主張「庭屋一如」こそ、日本文化の特質と考えてきた。
現在、福井県立大学長として地方創生へ多彩なプログラムを提案しているが、地元、曹洞宗大本山永平寺の七堂伽藍建立は、中国から招聘した「杭州大工」の手になり越前の集落景観形成にもその子孫の「永平寺大工」の匠の技が影響していると確信し、その現代的復活によって永平寺町の風景づくりをリードしたいと構想している。
庭と屋は、都市的スケールに拡大すると、ランドスケープとアーキテクチュア。
豊かな自然景観の「」に、「図」として永平寺大工による家並風景や建築景観が調和した郷土景観を形成したいと願う。