「伝統木造技術文化遺産準備会」の事務局として、日本の高度な「匠の技」である伝統構法をユネスコ無形文化遺産にするための運動をたちあげ3年間活動してまいりました。
今朝の新聞各紙で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産の新たな候補として、宮大工や左官などが受け継ぐ伝統的な木造建造物の修理技術が有力になっていることが発表されました。
正式には、本日、2018年2月7日の午後に開かれる国の文化審議会で決まります。正式に選定されれば、2020年の登録を目指し、政府がユネスコに申請することになります。
「NPO法人緑の列島ネットワーク」「職人がつくる木の家ネット」「伝統的構法の設計法作成 及び性能検証実験 検討委員会」と、15年以上もの間、国産材を使って、職人が一棟ずつ丁寧にする家づくりを未来につなげるための活動をしてまいりましただけに、私自身も大変嬉しく、これもひとえに皆様のあたたかい応援があってのことと、心から感謝しています。
今日の報道では「申請の対象は、伝統工法で寺社を建てる宮大工や、漆喰で壁を仕上げる左官、かやぶきや檜皮ぶきの屋根職人、手縫いの畳職人の技術などが中心になる見込み」と書かれています。これは、文化庁が認めた選定保存技術団体のうち14件(13団体)のみを対象としており、私としては、伝統構法のもっともコアな部分がまず認められたものと認識しております。
今後の展開として「伝統的な木造建造物の修理技術」からさらに、新築で伝統木造住宅を建てる大工や設計の技術、職人が使う道具をつくる職人の技術、「庭屋一如」と言われる日本建築になくてはならない庭園技術、石垣普請技術、素材となる日本の山の木を守り育てるしくみにまで広げていきたいと思っています。加えて、これらのいずれの技術の伝承にも欠かせない「人材育成」にもスポットをあてたいと考えています。
来年度からは「伝統木造技術文化遺産準備会」を「一般社団法人 伝統を未来につなげる会」(会長―中村昌生)に合流させ、さらにこの運動の認知度をあげていくよう、努力してまいりたいと思います。
日本のすばらしい建築技術を支えて来た職人たちのはたらきが評価され、過去のものとしてではなく生きた技術として次世代に継承されていくためには、このことが国民全体の願いとなっていくような広がりが不可欠です。そのためには、まだまだ皆様の応援が必要です。
4月28日には、明治大学での1000人規模のフォーラムも予定しています。詳細が決まり次第、みなさまにもインターネットなどを通じておしらせしますので、ぜひご来場賜りますよう、お願いいたします。
伝統木造技術文化遺産準備会 事務局
職人がつくる木の家ネット 代表
NPO法人 緑の列島ネットワーク 理事長
大江 忍
※17時過ぎに、文化庁から正式に発表になりました。
2月7日(水)に開催された文化審議会無形文化遺産部会において,「伝統建築工匠こうしょうの技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が本年度のユネスコ無形文化遺産(人類の無形文化遺産の代表的な一覧表)への提案候補として選定されましたので,お知らせいたします。
選定保存技術から登録されれば,初めての例となります。
なお、「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」の提案については,無形文化遺産保護条約関係省庁連絡会議(2月中旬以降開催予定)において審議の上,3月末にユネスコに提案書を提出する予定です。
(参考)今後の予定
平成30年2月中旬以降 無形文化遺産保護条約関係省庁連絡会議において審議
平成30年3月末 ユネスコ事務局に提案書を提出
これまでの例から見込まれる予定
平成31年3月末 ユネスコ事務局に提案書を再提出
平成32年10月頃 評価機関による勧告
平成32年11月頃 政府間委員会において審議・決定